デンマーク国内の養豚場を見学
前回の記事(デンマーク養豚研修 -会社訪問-)では訪問した企業についてお話ししました。今回は研修の際に見学した農場についてです。
研修ではデンマーク国内2つの農場を見学させてもらいました。海外の養豚場を直接見る機会はほとんどないため、今回はとても貴重な体験ができました。
母豚1500頭の繁殖農場
まず見学させていただいたのは母豚を約1,500頭飼育している農場です。こちらの農場では生まれた子豚を7kg程度まで育てて販売する、繁殖をメインとした農場※です。
※ 養豚経営はその形態別に「繁殖を専門に行う農場」 「肥育を専門に行う農場」 「繁殖と肥育両方を行う一貫農場」などに分けられます。
【デンマークにおけるアニマルウェルフェア】
デンマークを始めとしたヨーロッパではアニマルウェルフェアに基づいた養豚経営が行われています。EUでは母豚は分娩前後や交配後の一定期間を除いてストール飼育(母豚を1頭につき1つの柵にて飼育)が禁止されており、母豚は群飼することになっています。
【分娩舎での放し飼い】
上記の通り、デンマークでは一定期間を除いてストール飼育が禁止されていますが、分娩前後の母豚が生活する分娩舎においてはストール飼育が認められています。しかし、こちらの農場では分娩1週間前から分娩後4日を除いてストールを使用しないとのことでした。上の写真は分娩後ストールを開放した豚房の様子です。この様に分娩舎でストールを使用しない農場はデンマーク国内でもそれほど多くはないとのことです。
【データ管理について】
デンマークではどの農場においても農場内の様々なデータを数値化して、経営の向上に活かすということが当たり前になっています。こちらの農場でもデンマークで多く使用されている養豚ソフトを使用して成績管理をおこなっていました。定期的にデータを集計し、獣医師やコンサルタントとも相談の上、常に成績向上に努めているとのことでした。
【抗生物質の使用について】
農場の社長様とのお話の中で抗生物質についての話題がありました。デンマークは家畜に対する抗生物質の使用量がEU平均より少なく、こちらの農場でも抗生物質は使用せず、薬品自体も必要最小限に抑えているとのことです。
肉豚8,000頭の肥育農場
もう一箇所見学させていただいた農場は肉豚肥育専門農場です。こちらは30kg程度の子豚を導入し、110kg程度まで育てて出荷しています。農場全体では約8000頭の肉豚が飼育されています。
【機械化された農場】
各豚舎ではコンピュータを用いて「温度・湿度・重量・飼料摂取量・飲水・飼育期間・在庫頭数」など様々な情報を管理しています。豚舎内の換気も温度などの状況に応じて稼働するようになっていたり、耳に取り付けられたICタグを用いて個体管理も行われています。
【豚の増体(発育)を定期的に確認】
肥育農場においてはいかに効率よく発育させて早く出荷させるかが重要になります。この農場では頻繁に体重を測り、週齢ごとの増体重を確認しています。体重計については通常よく使用されるものとは別に、天井に取り付けられたカメラでも測定を行っています。
【コンピュータを用いた飼養管理】
農場内データは管理室で一元管理されており、常に農場全体の状況が把握できます。様々なデータを細かくとることで、農場の成績向上に活用しているとのことです。
農場見学を終えて
今回、デンマークにおける養豚場を見学して感じたことは、農場内におけるマネジメントがしっかりしているということでした。日本とは環境や設備の違いはありますが、普段の飼養管理をしっかりと行うかが重要であるとあらためて感じました。
また、デンマークはEU各国のなかでも成績向上などへの取り組みを積極的に行っており、今回見学して学んだことを今後の養豚経営に生かしていこうと感じました。